涼からお金を受け取ると、楽に儲けれたことに喜びを感じてしまう。

時間が経つと罪の意識は消え、金が欲しくなる。
そして再び盗みを働いた。捕まっても、拾ったと言い張れば罪を逃れられるだろうと思えば、さほど緊張しなくなる。

終には、就職するまでの、友人から依頼されたビジネスと割り切った。
どうせ盗るなら、高値がつく金持ちの携帯を狙おうと企む。

結果、裕福な家庭で育った子供しか入れない、学費が高い私立大学での置引きを常習するようになった。

冬の夕方6時は暗い。
前野がアルバイト店員をしている古本屋は、最寄駅から徒歩2分の場所に立地していた。
古びた個人経営店で、木枠のガラス戸を開けると押入れのカビのような臭いが鼻を刺激する。
以前は店員2名だったが、今はレジに1人だけ。

前野はレジに座って読書をしたり、居眠りをして長すぎる時間を潰していた。

時折、上下ジャージの中年男やトレーナーの主婦、大きいリュックを背負った太っちょ眼鏡の青年客が、店内を徘徊しては去っていった。