足早に廊下を歩く。
奥に窓と階段の踊り場が見えた。
窓際の喫煙所で、3人の男達が煙草を片手にだべっていた。
真昼の陽射しで3人の頭が黄金色に染まっている。

前野は途中でエレベーターに乗った。

一階に降り、自動ドアを抜けて外に出る。
このうえない快晴だが、木枯らしのような乾いた冷風が容赦なく吹きつけてきた。
ダウンジャケットのファスナーを首まで上げた。
連なる研究棟の間をさっと抜けると正門が見えてきた。
門はピカピカで真新しく、伝統はないがお金がかかっている。そんな感じだ。

正門を出ると、百メートルほどのなだらかな坂が続いた。
無駄に道幅があり、両端には幹の太い樹が等間隔に並んでいる。

坂が終わると二車線の道路が横切っていた。
前野は左に曲がって歩道を直進した。
脇で赤茶に錆びたガードレールが伸びている。

車道では絶え間なく車が行き交い、排ガスの臭いがつきまとった。


「ちょっとアンタ! 止まってもらえないかな」